吉田薫(経営コンサルタント)の「仕事もゴルフも『心技体』」

アスリート企業養成コンサルティング

アスリート企業養成コンサルティング

bae91bc2d6c92bed152bf0402abf4f4f_sドラッカーは著書『現代の経営』で、「企業にとって第一の責任は生き残ること(to survive)」と述べています。国内景気は上向きの兆候が見られるものの労働力不足など先行きには不安な要素が多いこと、新興国の急速な発展というグローバル化対応しなければならないこと、東日本震災という甚大な災害を経験したことなど、企業では何があっても生き残るための取り組みは喫緊の課題といえます。

ここで企業がおこなうべきことは競争に勝ち続けることです。これをスポーツアスリートに学び、『アスリート企業』となることを提言します。オリンピックなどの国際大会では「心技体」が充実した選手達の活躍は私たちに多くの感動を与えてくれます。「心技体」それぞれが高いレベルにあり、それらの相乗効果により優れたパフォーマンスにつながったのです。

スポーツアスリートの競争に勝つための取り組みを企業活athlete1動に対比してとらえることにより『アスリート企業』のあり方が見えてきます。まずは目標を明確に持つことです。次に「心技体」の充実、すなわち、「心」は組織全体で「我が社は競争に勝ち生き残る」という強い信念を持つことであり、「技」は高い付加価値を創出する仕組みを構築することであり、「体」はいわゆる経営資源である「ヒト・モノ・カネ・情報」を鍛えること、と定義することができます。さらにスポーツアスリートは本人一代限りであることに対し、『アスリート企業』は組織や事業の継続性も求められます。

競争に勝つ『アスリート企業』の養成に向けての取り組みを支援します。

『アスリート企業』の「心技体」とは
(1)競争に勝つための『心』

athlete2競争に勝つための『心』とは、ビジョン、目標、指標を共有し、達成に向けて強い意志を持つことです。まずは経営者の強いメッセージが必要です。現在の経営がどんなに苦しいときも、将来に向けて、管理職や一般社員など全社員が良いイメージを描けるようメッセージを発信し続けなければなりません。全社一丸となって取り組む団結力を固めるのです。管理職はこのメッセージを受けて自部門の目標達成に向けて自らが強い意志を持ち、部下の強い『心』に向けた働きかけをおこなうことこそが本来の仕事です。以心伝心を期待するのではなく、管理職が自らの言葉で伝えなければなりません。『心』を高めるなどのために朝礼で社是などを唱和する企業は多いのですが、唱和することが目的になっていることがあります。競争に勝つための強い『心』につながっているかを点検すべきと思います。

スポーツアスリートの言葉や行動からは参考になるものが大変多くあります。「気持で負けない」、「勝つしかない」、「絶対に金メダルを獲るんだという強い気持ちで戦いました」などは多くのアスリートたちがよく口にする言葉です。勝つために良いイメージ、勝った時のイメージを持つためのイメージトレーニングは多くのアスリートが取り入れています。コーチや指導者は選手のモチベーションを高めることでも重要な役割を果たしています。競技終了後には勝って嬉し泣き、負けて悔し泣きする姿もよく目にする光景です。目標を達成できて泣く、達成できなくて泣く経営者がどれほどいるでしょうか。

プロゴルフの試合では日本でも米国でも韓国のプロゴルファーが上位を占めることが多くなりました。韓国内には多額の賞金を稼げる試合が少ないこともあり、ゴルフを始めた時から世界で活躍することを明確な目標に掲げた強い『心』も大きな要因と考えます。

(2)競争に勝つための『技』

athlete3競争に勝つための『技』とは、企業において付加価値を創造する仕組みを強化することす。企業は、購買、製造、物流、販売、アフターメンテナンスなどの顧客にモノやサービスを提供する主活動(直接機能)と、開発、調達、人材管理、インフラ整備、広報などの主活動を支える支援活動(間接機能)によって付加価値を創造しています。これらの多くは企業内で組織化され、それぞれの部門がその役割を担っています。『技』の向上のため、各部門の『技』の追求はこれからも限界なく追求し一流といわれるレベルを確保し続けなければならなりません。他社と同じことをしていたのではやっと同じレベルになるだけで、競争に勝つためには他社と異なるユニークさが必要です。さらに『技』の向上にために注力すべきこととして各機能の連携(つながり)の強化を提言します。これにはあまり熱心でないところを見かけますが、企業の総合力においては最も重要なのです。機能のどれかに問題がある、あるいは各機能が超一流でなくても、連携を強化することで総合力では超一流になることができます。社内で何か問題のあったときに、他部門に責任をなすりあいをしている企業は注意が必要です。

ゴルフにおいて、ドライバーショット、アイアンショット、アプローチショット、パッティングをそれぞれの部門に例えた場合、各部門が最高レベルの技術を身につけようとすることは良いことです。しかし、ゴルフは「あがってナンボ」、何打でホールアウトすることを競うもので、プロゴルファーでも最高のナイスショットは1ラウンドに数回で、ほとんどが満足のいかないミスショットです。最高のナイスショットのみを求めるのではなく、次のショットがしやすいところに「わざとミスする」ことで連携を強化できる人は平均ストロークが良く、賞金ランキングも上位にいるのです。

スポーツアスリートの言動からは、「練習は裏切らない」、「無駄な努力は無い」など誰よりも厳しい練習をすることに類するものは多くあります。他と同じことをしていたのでは他と同じレベルにしかならないため、最先端の理論や科学的な練習方法を取り入れたり、ユニークな取り組みスタイルに注目されることもあります。落合博満さんの現役時代の「俺流」、野茂英雄さん、イチローさん、樋口久子さんの独特のフォームはその例といえます。つながり強化の典型例は北京五輪の男子4×100Mで銅メダルを獲得したことがあげられます。各選手の100Mの合計タイムではメダルに厳しかったものの、バトンパスを徹底的に早くおこなうことでつながりを良くし、総合力で競争に勝ったのです。勝ちにつながるルールの研究も必要です。昨今の日本柔道が金メダルをあまりとれていないことは残念ですが(このところは非常に好調で今後の大会に期待が持てます)、これは従来型の一本勝ちのスタイルを重視し、ポイント重視の勝敗決定を有利に取り入れていなかったことが原因であるとも言われています。

(3)競争に勝つための『体』

athlete4競争に勝つための『体』とは、経営資源といわれる「ヒト・モノ・カネ・情報」を鍛えることです。「ヒト」は力量、すなわち「マン・パワー×スキル」を確保することです。マン・パワーは採用により確保できますが、数がそろっていればいいというものではなく、企業の中長期ビジョンに適合していなければなりません。不景気時に採用を絞った企業では年代によって社員数が偏っていることがあります。競争は人材の総合力で戦うものです。企業間競争にシニア部門やアンダー30才部門などがあれば別ですが、経験が未熟な若年ばかりでも勝てないし、経験はあるが高齢化していても勝てません。スキルは訓練により育てるものであり、一朝一夕に得られないのはスポーツも企業も同じです。本人がやりたくない、または向いていないことにいくら取り組んでも効果が上がるものではなく、本人の適性や意思を考慮した適材適所が重要です。若手の教育・訓練においても再考すべきです。ジュニアスポーツにおいては体力に大きな差がなくても良い指導者の存在でレベルが大きく異なります。ジュニアはポイントをおさえて、やればやるだけ差がつくのです。このような指導者は技術指導に加えて、自立や自律、あいさつ、感謝(親に、先輩に)なども身につけさせ、人間として成長させているし、指導者が率先しておこなっていることはいうまでもありません。企業でも若手の教育・訓練を一層充実することが将来の強い企業につながるし、社員の定着も期待できるのです。さらに若手の指導により指導者のスキルアップも期待できます。「モノ」はカネ以外の資産で、身軽な方が望ましいといえます。不要な資産は「メタボリック症候群」な状態です。「カネ」はキャッシュフローと資金効率です。カネは人間の体で血液といわれ、元気よく回すほど良いのです。元気よく回れば筋肉質になるが、淀んでいると血管が詰まるし、余分な脂肪がついてしまいます。「情報」は経営判断に必要な情報を得ることです。適時性(スピード)が重要で、多ければ良いというものでもありません。ビタミンは適切な時期に適正な量を摂取することで健康な体に寄与しますが、過剰に摂取しても排泄されるだけです。これら「ヒト・モノ・カネ・情報」はここ一番で力を発揮すること、厳しいときこそ乗り切れるように、日頃から健康を保ち鍛える努力をし続けなければなりません。

(4)競争に勝つためにもっと『心』の充実を

athlete5『心技体』について、企業では『技』の取り組みは熱心です。しかし、この多くは他社と同様にことをおこなっているに過ぎず、競争力を高めるためというよりは、他社と同レベルに追いつくためという感があります。例えば業務改善や品質改善はどの企業も取り組んでいて、これに取り組むことのみでは不十分です。また、多くの企業では『技』の取り組みに熱心で、順序をつけるとすれば『技体心』となり、『心』が軽視される傾向にあります。スポーツアスリートはメンタルトレーニングを重視しています。良いイメージを描くトレーニング、不利な状況にも自らを奮い立たせるトレーニングなどに熱心で、専門のカウンセラーをつけることもあります。企業ではこれに類するものとして「メンタルヘルス」がありますが、これはどちらかというとメンタルが病んだ人をケアするという要素が多く、特定の人が対象になっています。他社があまり力を入れていないからこそ、全社員にもっと良いイメージを描くトレーニングをおこなうことが競争力の向上の近道ではないでしょうか。いうまでもなく『心技体』の3つの要素はそれぞれ影響し、相乗効果があります。相乗とは乗算、『心技体』の掛け算です。『技体』を10%向上することは相当困難ですが、『心』を30%向上することは、あまり熱心にやってこなかった企業では容易に達成できるはずでです。優良企業、エクセレントカンパニーと言われる企業では社員がビジョンを共有し、目標達成についての使命感を持っていることが取り上げられることがあります。『心』の向上をきっかけに『技体』も向上するという相乗効果を狙うと良いと考えます。

『アスリート企業』の養成支援
athlete6(1)『アスリート企業度』診断

『アスリート企業』の各要素に関して『アスリート度』を診断し、『アスリート企業』の養成に向けておこなうべきことを明らかにします。経営者へのインタビューにより経営者の想いを、『心技体』調査によりその思いの浸透度合いを診ます。『心技体』充実度評価研修により、受講者の考えや意見などから組織の『心技体』の充実度を診ます。ここで認識した『心技体』の問題点や課題は、現場確認や数値的な指標からさらに深堀して評価します。足元の健全性も調査し、『アスリート企業度』を総合的に評価します。この診断により、例えば経営者や社員は、自社の、あるいは自分の将来をどのように考えているか、社是や企業理念がどのくらい浸透しているか、自社にどのような期待を持っているか、どのような企業文化か、競争力の強化に必要なことは何か、などについて明らかにします。

(2)『アスリート企業』養成支援

『アスリート企業度』診断により組織の課題や問題点を把握した後、企業の取り組むべきことを盛り込んだ『アスリート企業養成プログラム』を作成します。目標を設定するにあたっては、全体のあるいは部門の目標は全て達成度(いつまでに何をどのレベルになど)がはかれるものとします。これを定期診断などで評価し、『アスリート養成プログラム』の是正をおこない、継続的に競争力の向上に取り組みます。

 

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