スポーツでは「心技体」の充実が大事だと言われます。じつに簡潔に上手く表現された言葉です。ゴルフにおいては、上手くなろう、ライバルに勝とうといった「心」、練習や経験から得た「技」、日頃からトレーニングし、ベストコンディションで臨む「体」が良い結果を導きます。
ところで皆さんはこの「心技体」に順位があるのか、あるいは順番ではなく三位一体なのかと考えたことはありませんか?私は少し前までは3つのバランスが重要と考えていましたが、今はまず「心」だと考えています。少し前に数シーズンぶりに優勝した谷口徹プロが優勝インタビューで「今回は何年かぶりに勝ちたいと思って戦った」とコメントしていました。あるいは「気持で負けないようにがんばった」という言葉も良く聞きます。まず「心」という例です。プロゴルファーの青木功さんや、プロ野球選手などのトップアスリートのなかには「体技心」の順だと言っておられる方もいます。高いレベルで勝負するにはまず「体」というワケですね。
そこで、ビジネスにおける「心技体」を考察してみましょう。「技」は付加価値を生み出す仕事の仕組みです。研究開発などで組織の技術力を高めること、効率的で効果的な仕事の仕組みを整備することにより「技」は向上します。「体」は組織および組織の力量です。事業や業務に見合った体制を整備し、OJTやOffJTにより従業者のスキル向上に取り組み、後進に技能伝承することで充実するでしょう。ところが「技体」は充実しているのに芳しい効果が上がらないという声をよく聞きます。人材の確保も、スキルも満たしている、仕事の仕組みも問題なし。しかし品質が向上しない、納期が守れないなど。これらは「心」が充実していないため「技体」が形式的になっているのです。「心」とは従業者の意識の充実、やる気、チームワークといった企業文化でもあります。「心」の充実は一朝一夕にできるものではありません。組織全体で盛り上げていくことが重要で、経営者や管理職は「心」の充実に注力すべきなのです。ああしろ、こうしろと指示を出すことばかりに熱心で、組織の「心」が停滞していませんか。日頃から部下とコミュニケーションを取り、仕事のやりがいや愛社心を醸成することで「心」は充実します。
私は企業でコンサルティングや社員研修を行っていますが「納期遵守が当社の課題」と言いながらグループ討議の終了時間になっても結論に至らない、「品質向上」が課題なのに基本的な社内ルールを守っていないなどの事例をよく見かけます。これらはまさに「心」の欠如です。本気で課題を解決しようという意識が足りないのです。「心」が充実すれば「技体」が変わります。
ゴルフのハンディキャップを3年以内にシングルにする、ドライバーで280ヤード以上飛ばすといった、目標を必達する強い「心」をまず持つことが「技体」の充実につながるのです。